【まとめ】獣医学部では何を学ぶ?カリキュラムの全貌や大学間での違いについて解説!
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獣医学部では獣医師を要請するために生命科学の基礎から臨床まで体系的なカリキュラムが組まれています。とはいっても具体的にはどんなことが勉強できるのかは外からはわかりにくいと思います。今回はそんな獣医学部のカリキュラムについてご紹介します。

 

モデル・コア・カリキュラムの制定

現在、日本の獣医学部ではすべての大学で「モデル・コア・カリキュラム」と呼ばれる統一された指導要領にそって同じ科目を学習しています。獣医学部でどんなことを勉強しているにかをご紹介する上で、避けては通れない概念なので、まずはそれをざっくりとご説明します。

 

●教育一本化の流れ

2004年の大学法人化以降、獣医に限らず、教育の質を大学間で保証しようという議論がなされ、カリキュラムの見直しが行われてきました。加えて、獣医領域では感染症を始めとする国を越えた問題に取り組むために、国際的にも獣医学教育の質を保証しようという流れもあり、国際獣疫事務局 (OIE)からも指針が発表されています。

 

これらのこと受けて日本の獣医学教育では大きな改革が始まり、それまでは獣医師国家試験のガイドラインを参考に各々の大学が独自にカリキュラムを組んでいましたが、2012年度の入学者からは全国16大学 (2018年から17大学) で共通の目標を定めた新たなカリキュラムを受けることになりました。

 

そしてこの共通の目標を示す統一されたガイドラインこそが、「モデル・コア・カリキュラム」、通称コアカリです。

 

●全く同じ内容の授業を受けるの?

コアカリには大学卒業時までにどんな知識をもっている必要があるのかを示した指針で、各科目ごとに具体的な到達目標が示され、それに沿った授業を各大学で行います。教科書もコアカリ準拠の教科書が次々に導入されており、それを使用しての授業になることから、おおよその授業内容はどこの大学でも同じになるかと思います。

 

しかし、コアカリが示すのは6年間の履修年限の中の、3分の2程度の内容であると明記されており、残りの3分の1については大学の理念や社会的要求に基づいた判断により組まれるカリキュラムが実施されます。また履修時間の配分もコアカリには示されていないため、共通目標を達成することは求められますが、細かいカリキュラムについては大学独自の判断、ということになります。

 

科目名も定められていないため、各大学の授業を比較しても、統一されたカリキュラムには見えないこともあります。つまるところ、コアカリは獣医教育の質の最低ラインを保証するもので、それをどう発展させるかは各大学次第、といったところでしょうか。

 

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コアカリの内容

コアカリは大きく講義科目と実習科目の2つに分けて示されております。今回は獣医学部でどんなことを勉強しているのかをお伝えするために講義科目に絞って見ていきたいと思います。

 

●基礎獣医学分野

これは獣医学部に入って最初に習う基礎分野です。解剖学や生理学など生命科学の基礎から獣医関連の法律や動物福祉など、今後の勉強の土台をつくります。基礎科目は医学部や薬学部とも共通するものも多いと思います。一覧で見てみるとこんな感じ。

 

  • 獣医学概論
  • 獣医倫理・動物福祉学
  • 獣医事法規
  • 解剖学
  • 組織学
  • 発生学
  • 生理学
  • 生化学
  • 薬理学
  • 動物遺伝育種学
  • 動物行動学
  • 実験動物学
  • 放射線生物学

 

わかりにくいのは、動物遺伝育種学などでしょうか。これは家畜の品種改良やそれに付随して起こる遺伝病なんかを勉強する学問です。詳しい説明はまたの機会にしたいと思いますが、これを2年生から3年生で学ぶことになります。法律や福祉などを除けば、これらの講義科目は実習科目もセットになっており、午前中は講義、午後は実習 (実験)をする、というような流れになるかと思います。

 

 

●病態獣医学分野

基礎分野で正常な生命の仕組みや状態を勉強した後には、病気や異常を学びます。魚の病気を学ぶ魚病学なんかもあります。一覧はこんな感じ。

 

  • 病理学
  • 免疫学
  • 微生物学
  • 家禽疾病学
  • 魚病学
  • 動物感染症学
  • 寄生虫病学

 

各動物のさまざまな病気の知識をひたすら頭に詰め込んでいく、学生泣かせの苦しい分野でもあります。それがおもしろいとことでもありますが。病理学なんかは実習で、死んでしまった動物の死亡解剖をしたり、組織診断のために顕微鏡とにらめっこしたりとなかなかハードだった記憶があります。

●応用獣医学分野

応用分野はこれまでの知識を動員して、動物や人の健康をどう管理していくかを学ぶ分野といったところでしょうか。ここらへんから実際の社会での獣医師の業務と結びつく学問になってきます。「衛生」と名のつく学問が多いですね。

 

  • 動物衛生学
  • 公衆衛生学総論
  • 食品衛生学
  • 環境衛生学
  • 毒性学
  • 人獣共通感染症学
  • 疫学
  • 野生動物学

 

獣医師の業務として、食品衛生関連の業務はあまり認知されていないように感じますが、これは獣医が中心を担う大切な業務です。行政において食中毒の調査や管理は、獣医師が中心的な役割を担っているんですね。なのでこの辺りの勉強もたくさんします。

 

●臨床獣医学分野

最後は臨床分野です。動物の診療に必要な知識を学びます。かなり細かく分かれていますので、まずは一覧で見てみましょう。

 

  • 内科総論
  • 臨床病理学
  • 臨床薬理学
  • 呼吸循環器病学
  • 消化器病学
  • 泌尿生殖器病学
  • 内分泌代謝病学
  • 臨床栄養学
  • 神経病学
  • 血液免疫病学
  • 皮膚病学
  • 臨床行動学
  • 外科総論
  • 手術学総論
  • 麻酔学
  • 軟部組織外科学
  • 運動器病学
  • 眼科学
  • 画像診断学
  • 産業動物臨床学
  • 馬臨床学
  • 臨床繁殖学

 

と盛りだくさんです。大抵は、内科各論、外科各論などとまとめた講義名がついていて、その中で各分類の病気とその診断法、治療法を学んでいく形になります。レントゲンやエコー画像に慣れるまで苦労した覚えがあります。

 

まとめ

今回はとりあえず、獣医モデル・コア・カリキュラムに示されている科目をざっとみていきました。科目名だけではイメージは掴みきれないと思いますが、なんとなく全貌がわかっていただけたら幸いです。

 

授業科目は上記のような内容を必ず押さえる形で設定されており、すべての大学である一定ラインは統一されています。異なってくるのは、どれほど深くやるかということや、どのような設備で学べるのかということ、また実習はさらに大学によって色があると思います。

 

また5、6年次の卒業研究は各大学さらには所属する研究室によってどんなことができるのか千差万別です。志望校を考える際にはぜひ大学HPで研究内容にも目を通しておくことをおすすめします。

 

今後も見直しが行われていくということなので、どうなっていくのか見守っていきたいと思います。

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