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西アフリカで起きたエボラ出血熱の大流行から約4年が経ちます。1万人以上の死者を出した「災害」とも言えるエボラ出血熱ですが2016年に一旦の終息をみました。しかしあれから4年、エボラ出血熱は現在コンゴ民主共和国で拡大をみせています。今回はそんなエボラ出血熱についてこれまでわかっていることをまとめておきたいと思います。

 

エボラ出血熱とは

エボラ出血熱はフィロウイルス科エボラウイルス属のウイルスによって引き起こされる急性ウイルス性感染症です。致死率は50%~90%と非常に高く、無処置の場合にはほとんどの場合で死に至る恐ろしい感染症です。

 

エボラウイルス

CDC / Cynthia Goldsmith [Ebola virus virion]

 

フィロウイルスという名前はラテン語の filo(糸状)に由来し、図のようにフィラメント状の粒子をもつおもしろい形状をしています。長さや形は様々です。遺伝子的な分類では一本鎖RNA(-)のモノネガ目ウイルスと呼ばれるグループに属しますが、多くの人にとってはどうでもいいですかね。

 

エボラウイルスには5種類あり(それぞれブンディブギョエボラウイルス、レストンエボラウイルス、スーダンエボラウイルス、タイフォレストエボラウイルス、ザイールエボラウイルス)、病原性が異なっています。レストンウイルスだけが人に病原性を持たないとされています。中央アフリカで流行を繰り返してきたのは主にザイールエボラウイルスとスーダンエボラウイルスで、2014年ー2016年の大流行はザイールエボラウイルスによるものでした。

 

 

感染源

オオコウモリ科のコウモリがエボラウイルスを保有する自然宿主 (=感染しても重篤な症状を示さない動物) とされており、コウモリを食べたり、コウモリの排泄物や体液に接触したりすることで人に感染すると考えられています。またコウモリ由来のウイルスに感染したサルの仲間と接触することで感染した例もあります。ただコウモリについても本当に自然宿主かどうかはまだ議論の余地があるようです。

 

感染力は強いものの空気感染はせず、血液や体液と接触しなければ感染することありません。咳やくしゃみによる人から人への感染もインフルエンザなどよりは起きにくいと言われます。ただし実験的には飛沫感染も起こるため、患者は適切に隔離する必要があります。

 

エボラウイスルの自然宿主と考えられているオオコウモリ。Fritz Geller-Grimm, 2006, [Eidolon helvum, Zoological Garden Berlin, Germany] CC BY-SA

 

エボラウイルスは回復した人の体内でも存続することが知られています。睾丸、眼の内部、および中枢神経系などで特に存続しやすいと言われますが、妊娠中に感染した女性では、胎盤、羊水、胎児でウイルスが存続し、授乳中に感染した女性では、ウイルスは母乳中に存続している可能性もあるようです。病気からの回復者の何人かの体液では、ウイルスが9か月以上にわたって陽性であったという報告もあります。

精液中などにもウイルスが含まれることがあるので、回復しても性行為には注意するようにと流行中は保健機関が呼びかけていました。

症状

感染すると、2~21日程度の潜伏期間の後、発熱をきたすほか、頭痛、倦怠感、筋肉痛などのインフルエンザ様症状や嘔吐、下痢などの症状も併発します。さらに症状が進行すると多臓器不全や血管の傷害が起こり、粘膜や皮下などで出血を起こるようになります。ただし、すべてのエボラウイルス感染例で出血がみられるわけではありません。そのため近年ではエボラ「出血熱」ではなく単にエボラウイルス病(Ebola virus disease: EVD)と呼称されることも多くなりました。

 

Mikael Häggström, [Symptoms of ebola], Licence under Public Domain

 

もう少しエボラウイルスの病態進行について言うと、ウイルスタンパク質vp24によるインターフェロン抑制に代表される免疫抑制を引き起こしながら、広範囲な臓器・器官でウイルスが増殖します。感染初期の標的細胞は単球・マクロファージ、樹状細胞といった免疫担当細胞で、免疫系を狂わせ、結果的に全身性の炎症性応答症候群 (サイトカインストーム) から血管透過性の異常昂進、血液凝固系の破綻、ショック症状を引き起こし、死に至ります。今回はそれぞれの病態については割愛させていただきましょう!

 

エボラの歴史と現在の流行状況

エボラウイルス流行の歴史は以下の表のようになります。

出典:厚生労働省検疫所FORTHホームページ, 2018, [エボラウイルスについて (ファクトシート)]

2014年ー2016年の流行ではそれまでの死亡者数全ての合計よりも多くの人が亡くなりました。

 

そして表の上の方にあるように2016年に大流行の終息宣言が出された後にもアフリカの中央に位置するコンゴ民主共和国で発生があります。その後、2018年8月頃からコンゴ民主共和国では感染が拡大しており、2018年11月29日の発表では患者数426人、死者が245人に達しており、史上2番目に大きな流行となっています。今後の情報に注目です。

 

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あの時とは違う!進んだエボラ対策

ワクチン投与開始

 

今回のコンゴ民主共和国での発生ではすでに開発された「rVSV-ZEBOV」エボラウイルスワクチンの接種が行われています。ニューリンク社とメルク社が開発した、ウシ水疱性口炎ウイルス(VSV)をベクターとしたエボラワクチンで、第3相臨床試験を完了した唯一のワクチンだそうです。VSVの糖タンパク質遺伝子を、ザイールエボラウイルスのそれと置き換えたものです。

 

ちなみにrVSV-ZEBOVという名前は、組み込んだ遺伝子を運ぶ役割をする遺伝子ベクターが組み替え(recombinant)VSVで、ザイール(Z)のエボラウイルス(EBOla Virus)に対抗するというところから来ているみたいですね。覚えやすい!

 

前回の大流行の際も臨床試験段階だったこのワクチンは、ギニアとシエラレオネでリングワクチン接種(包囲ワクチン接種)により5837名に接種されました。ランダムに2グループに分けて、すぐにワクチン接種が行われたグループでは、感染者はなんとゼロ人!対象として21日遅れてワクチン接種を受けたグループでは、23名が感染したそうです。ということでかなり有望視されているワクチンになります。

 

ちなみに2018年9月9日までに、7,409名がワクチンの接種を受けています。今回のワクチン接種効果はまだまとめられていませんが、良い結果が得られれば人類と感染症との戦いにおける大きな一歩として歴史に残るでしょう。「実験」のような見方はもちろんよくないですけども。一日でも早く流行が沈静化することを祈ります。

 

治療薬は?

まだ罹患していなければ、ワクチンによる予防が期待できるようになりましたが、すでに感染してしまった場合の治療はどうでしょうか?残念ながら、今のところ優れた治療法が確立されたわけではないといった印象です。これはウイルス性の感染症のほとんどがそうなので難しいところです。しかしながら、いくつかの治療薬が使用されています。

 

その一つが日本の富士フイルム富山化学株式会社が開発したファビピラビル (アビガン錠)で、5月にはコンゴ民主共和国に提供され、既に12,000錠をコンゴ民主共和国の首都キンシャサの国立生物医学研究所(INRB)で、2,000錠を国境なき医師団で保持しているそうです。

 

他にも治療薬としてmAb114、Zmapp、Remdesivirが26名に投与されており (2018年9月のデータ)、そのうち15人が治癒して退院しているそうです。

 

いずれも治療薬の効果や副作用は今後使用していく中で判断されていくといったところだと思われます。これについてもこれからの情報に注目といったところでしょうか。

 

まとめ

エボラウイルス病はアフリカで繰り返し発生しており、またも大規模な流行が起こっています。今後、アフリカの風土病のようなものになってしまうのでしょうか。エボラウイルスの被害が一刻も早く収まることを願います。

 

研究者の方々も自分の身を危険に晒すことを承知で、現地や研究所で日夜エボラウイルスの研究に励んでいます。実際に2014年からの大流行の際には研究のために、患者からサンプリングを行っていた医師を含む研究者数名が亡くなりました。こうした犠牲の上に科学の進歩があるのだと思います。亡くなられた方々のご冥福をお祈りします。

 

 

 

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