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みなさん羊はお好きでしょうか?もこもこでかわいいですよね。羊は世界的にメジャーな家畜で、合計約10億頭が飼育されていると言われます。そんな羊ですが、実は日本ではあまり飼育されておらず、羊牧場が実際にどんなものなのかイメージが湧きにくいかもしれません。そんな羊が気になる日本の皆様のために、オーストラリアの羊牧場で働いた体験談をお伝えしたいと思います。

 

世界の羊産業

羊と聞くと何を思い浮かべますか?広大な草原に転々と白い羊がいる素敵な景色だったり、おじさんが羊をペンペンしながら山の斜面を登っていく牧歌的な風景だったりするんでしょうか。はたまたアルプスの少女ハイジが可愛がっているユキちゃんでしょうか。あれはヤギです。

 

羊産業は主に羊毛 (ウール)と羊肉 (ラムやマトン)の2つに分けられます。それぞれに適した品種があり、例えば羊毛ならメリノ種、羊肉ならサフォーク種などが有名ですね。もちろんメリノ羊も最終的にはお肉になりますし、サフォーク羊から羊毛をとることも可能です。きっぱりと分けられるわけではないんですね。そして毛かお肉のいずれかを専門でやっている農家もあれば、どちもやっている農家もあります。

 

多くの人が思い浮かべるもこもこの羊はメリノ種とかですね。こんな感じ。

 

サフォーク種はこんな感じ。黒いお顔が高貴な感じがするとかで人気です。ひつじのショーンもおそらくサフォーク種でしょうね。

 

僕が仕事をさせてもらった羊農家はお肉も毛もどちらもやっている大きな農家でした。その模様をお伝えします。

 

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オーストラリアの羊農家

オーストラリアは羊の飼育頭数が世界で二番目に多い、言わずと知れた羊大国です。ちなみに一位は中国。羊は比較的少量の草でも生きていけるので、オーストラリアでも雨が多くない、少し内陸の土地などで大々的に放牧されています (まぁどこにでもいるけど)。

 

基本的に食べるものなどは牛とそう変わらないので、羊と牛両方を飼育している農家さんも結構います。広い草原が続いてるなーって場所は牛か羊の放牧地、もしくは彼らのための草を育てている場所であることがほとんどだと思います。

 

 

僕がお邪魔したのはNSW州の北西部?にある1万頭規模の家族経営の羊牧場でした。基本情報はこんな感じ。

 

  • 羊肉をメインで生産している
  • フィードロットがある
  • 20個以上の区画 (パディック)を使って羊を放牧させている
  • 終わりが見えないくらい広い
  • 羊毛に適したメリノ種も飼育している
  • 家族経営でお父さんお母さん、友達のおじさん、たまにじいちゃんの4人が働いている

 

大規模な農家ですが、羊は基本的に放牧なので、ギリギリ家族と少しの手伝いでやっていけているようです。ですが、子羊のシーズンは忙しくて手助けがほしいということで、たまたま縁あってホームステイをしながら仕事をさせてもらいました。

 

羊牧場の運営

羊は基本的には日が短くなってくる秋頃に発情する動物です。なので日本の羊農家では9月から11月頃に交配して、2月から4月ごろに子どもが生まれる、というのが一般的だと言われますが、正直なところそこまで厳密ではないしいです。

 

オーストラリアで春頃に交配させる農家も多く、これには時期をずらすことで高く売れる、というメリットがあるそうです。ちなみにオーストラリアは季節が日本と真逆と言いますが、も少し四季の感覚は違うような気がします。このへんは場所にもよりますね。

 

羊農家の1年

僕がお邪魔した羊牧場のサイクルを図にしてみるとこんな感じ。

 

まあ大体こんな感じだと思いますが、僕が滞在していた農家では交配時期を10月頃に持ってくることで、出荷時期をずらしていました。これができるかどうかは、お母さん羊のコンディションに左右され、お母さん羊のコンディションはその年の天候や飼い方に左右されます。

 

お母さん羊の一生

メスの羊(英語ではewe)は1年に1回1~3匹の子羊を出産します。お母さん羊は繁殖のステージによって交配期、妊娠期、授乳期、乾乳期(または回復期)の4つの状態に分けられます(まあ分け方はいろいろです)。

 

交配期

交配期はjoining periodと呼ばれ、メス羊の群れに少数のオス羊を入れ、1ヶ月~2ヶ月ほど一緒に飼育します。大体メス50頭~80頭に対してオス1頭くらいの超ハーレム状態です。時期にもよりますが、9割以上は受胎し、妊娠期に移ります。

 

これ以外の期間は大人のオスは別の場所で飼育され、メスには会えません。彼らはこの1年に1度のビッグチャンスを生きがいに残りの期間を男ばかりのむさ苦しい群れで過ごすわけですね。

 

 

妊娠期

羊の妊娠期間は147日くらいと言われ、まあ約5ヶ月と思っていただければ大丈夫です。メスのコンディションが良ければ双子、まれに三つ子を妊娠し、生まれる子羊の数は母数の大体150~160%くらいですかね。僕がいた農場では双子妊娠が45%~60%と言っていました。

 

夏頃に妊娠したメス羊が秋から冬に出産、離乳する頃には春になって子羊が食べる草がたくさん、というのが羊たちの家族計画です。

 

 

授乳期

出産期は冬頃で、妊娠したタイミングが前後するため1ヶ月~2ヶ月間くらい出産ラッシュが続きます。出産ラッシュが終わったタイミングで子羊たちの去勢イヤータグの取り付けワクチンの接種などが行われ、これがマーキング (Marking)と言われる羊農家の一大イベントになります。

 

初産の羊はやはりうまく分娩できずに、死産したり、お母さんが死んでしまったりもするので注意して見てあげないといけません。生まれた子羊も日本の舎飼い羊は乾かしたり、温めてあげたりするかもしれませんが、オーストラリアの大規模農家ではお母さんに任せるのみでした。

 

授乳期は2ヶ月~3ヶ月ほどで、その後お母さんから子羊を引き離します(離乳)。

 

 

乾乳期

離乳後、子離れしたお母さんたちは子育てストレスから開放され、授乳する必要がなくなった体も回復していきます。この離乳後から次の交配までの期間が乾乳期 (Dry period)で、ママ友の群れで過ごすことになります。

 

 

廃用

大体7~9年くらいこのサイクルで子羊を生んだ後、ママたちはお肉になります。このお肉はいわゆるマトンというやつですね。お世話になった農家さんいわく主にマレーシアやインドなどに出荷されるそうです。

 

 

新しいお母さん羊

新しいお母さん羊はどこから来るのかといいますと、農家によりますが、大規模農家なら自分たちで一貫生産しているところが多いと思います。つまり生まれた羊のメスを出荷せずに次のお母さん候補として育てるわけですね。

 

ただ、肉用の家畜はどれでもそうですが、品種の掛け合わせが重要になるので少し複雑です。つまり、肉として出荷する子羊を生むお母さんと、そのお母さんを生むお母さんは別の種類の羊なんですね。わかんないですね。図説してみます

 

最初に載せたサイクルは出荷する子羊を生産するサイクルで、それとは別に青で示した、出荷する子羊を生産するためのメス羊 (ファーストクロス) を生産するサイクルがあります。ここで羊毛に適したメリノ種を使っているため、この農家では毛刈りと羊毛の出荷もサブで行っている、ということです。

 

種類の具体名は実際に使われていたものを例にあげました。プリメラ種は比較的新しいニュージーランドの品種かな?あまり有名ではないと思いますが、肉羊用の種オスです。

 

 

子羊の一生

子羊はママのもとで2~3ヶ月過ごした後、離乳して草を食べ始めます。そしてそのまま別の肥育農家に売られていく場合もあれば、その農家で肥育される場合もあります。この辺りは農家の形態や子羊のお値段に左右されます。

 

ラム肉と言われるのは生後12ヶ月未満の子羊のお肉なので、それまでの間たくさんお肉がつくように餌をいっぱいもらって育ちます。放牧ではなく、囲われたスペースで餌を常に供給して育てる形態をフィードロットと呼びます。日本語では肥育場でしょうか?

 

こんな感じです。画質はごめんなさい。

奥に見える銀の箱には穀物が入っています。穀物と草の比率や栄養価などを計算して、綿密に管理することで立派な子羊に仕上げるわけですね。

 

そして値段の変動を見つつ、12ヶ月になる前に出荷され、ラム肉として世界中に供給されるわけです。僕がいた頃は1kgあたり8ドル(AUD)くらいだったと思います(ものによりますが)。子羊は12ヶ月齢なら25kgくらいです。

 

 

羊牧場のお仕事

羊牧場の毎日のお仕事は以下のような感じです。毎日7時ごろから働き出し、夕方6時ごろに切り上げるといった感じでした。

 

日常的なお仕事

羊の餌やり

基本的には放牧ですが、羊のステージによって穀物を与えたり、草が不足しているときには干し草をあげにいったりしていました。また限られたスペースで管理している肥育羊などにも餌をあげにいく必要があります。

 

車で牽引しているエサ箱から穀物や干し草をばらまいていくと画像のように長い羊の列ができて、壮観でした。

 

 

群れの移動

放牧地はいくつものパディックと呼ばれる区切られた草地からなっており、あるパディックの草を食べ尽くしたら次のパディックに動かし、草丈を回復させるというサイクルを繰り返します。またワクチンや駆虫薬の投与をするために、群れを作業場に移動させることも多いです。

 

出荷のためにトラックに載せる作業なんかもありますね。このクソデカトラックです。バイクですれ違うとふっ飛ばされそうになる憎いやつです。

 

基本的に群れを動かすときはバイクやバギーに乗って行きます。もちろん牧羊犬も大活躍です。

 

 

ワクチン接種や駆虫薬の投与

伝染病の予防は畜産業ではとっても大切です。特に羊では他の家畜に比べて寄生虫が問題になることが多く、定期的に駆虫薬を飲ませています。そしてその後、うんちを回収しどんな寄生虫の卵がどれくらい検出されるかを確かめて、駆虫プログラムの見直しをしたりします。これはドレンチテストとかってよばれますね。

 

ワクチン投与はワクチンガンと呼ばれる画像の紫の銃のようなものを使って、連続で投与していきます。まあ銃といっても小さい水鉄砲みたいなものの先に針がついているだけです。

 

この他にも使用する農業機械のメンテナンスや、餌の在庫管理、フェンスの修復、牧羊犬のお世話など羊に直接関わらない雑多な仕事もたくさんあり、あっという間に日は暮れていくわけです。

 

 

ビッグイベント

日常的なお仕事の他に、ある時期行われる大仕事があります。

 

ラムマーキング

子羊が生まるシーズンになると、生まれた子どもたちに識別のためのイヤータグをつけ、ワクチンを接種し、断尾処理去勢を行うという仕事があります。これをラムマーキングといいます。ちなみにラム=lambで子羊のことですが、オス羊も英語でram、カナカナではラムになるのでややこしいですね。

 

断尾処理の詳細は以下の記事で

 

 

上の画像で子羊の下腹部にある丸っこいふわふわはタマタマです。かわいらしいですね。根本にわっかをつけて、数週間おくと血流を遮断されて、ポトっと落ちます。去勢しないとお肉に独特の匂いがついてしまったり、まあ病気のリスクを高めることになったりするので、ほとんどの羊牧場ではこれが行われます。

 

こんな感じのふわふわした丸いものが農場に落ちていたらそれはタマタマです。

 

ちなみに大人のやつはこれ

あんなにかわいいフワフワだったのに、こんな凶暴な大きさになります。ああ無常。

 

 

僕は主にこのラムマーキングの労働力として働いていました。群れを作業場まで移動させてきて、子羊と親羊を分け、子羊を捕まえては台に載せるという苦行をひたすら続けました。まあ子羊はかわいいけどね。

 

 

毛刈り

毛刈りは夏頃に行われます。羊毛農家にはsharing shed(シェアリングシェッド)と呼ばれる毛刈り小屋があり、ここに群れを運んできては毛を狩るわけです。羊はグッと引き倒して座らせるとわりと大人しくなるので、1人でも作業できます。もちろん暴れるやつもいますが。

 

毛刈り小屋はこんな感じで、作業ブースと電気バリカン、毛の圧縮機や選別テーブルなんかがあります。

 

ちなみに変動はありますが、このときウールの価格は15豪ドル/1kgくらいでした。羊1頭から5~6kgくらいとれるので(ものによるけど)、1頭から80ドルくらいはゲットできるとおじさんが言っていました。おじさんは千頭規模で飼っているので、まあまあいい収入になるそうです。

 

まとめと感想

日本の獣医学部では羊の病気などについては学びましたが、ほとんど羊に触れる機会はなかったので新鮮で良い経験になりました。身体的にまあまあきつい仕事もありましたが、オフロードバイクにまたがって羊を追いかけてるのはなかなか爽快で楽しかったです。

 

仕事終わりの消耗した体で、小学生の息子たちとラグビーをするのも楽しかったです。英語の勉強にもなりました。農家さん一家がとてもいい人たちで、いろいろなことを教えてくれました。ありがとうございました。

 

 

ちなみに精神的に一番辛かったのは、残念ながら死んでしまった牛 (その羊農家では牛を少しだけ飼っていました)を解体して牧羊犬にあげる作業です!数日間にわけてあげていたので、途中でウジがわいてきて、ウジまみれのウシの四肢を斧で叩き割っていました。流石にそのときには「僕は一体何をしているんだろう」と虚無感に襲われました。

 

畜産現場はきつい・汚い・臭いの3Kからは逃れられないので働いてみたい人は覚悟しましょう。まあ素手でウンチ集めたり、腐臭がきつい死体を回収したり、ウシのお肉を斧で切り分けたりしていると小さなことはどうでもよくなってきます

 

というわけでほとんど誰も興味ないであろう羊農家の運営やお仕事について書いてきました。本当にこれ誰が読んでくれるんだろうと、パワーポイントで図説を作っているときには心が折れかけましたが、一部マニアのためになればと思います。

 

オーストラリアの干ばつが終息することを祈って、今回は終わりにしたいと思います。

 

 

オーストラリアの牧場仕事探しは下記の記事で!

 

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